源泉徴収、年末調整

2024年(令和6年)分 年末調整の改正点を解説

税理士の松井元です。

2024年(令和6年)分の年末調整の改正点を解説致します。

Youtubeに動画もアップしております。

00:00 🔷導入
02:07 🔷定額減税の年調減税事務
06:10 🔷扶養控除等(異動)申告書の『簡易な申告書』
20:22 🔷非居住者である扶養親族への送金関係書類の範囲追加
23:18 🔷〇基・配・所への定額減税に係る記載欄の追加
29:57 🔷保険料控除申告書の記載事項『あなたとの続柄』欄の削除
31:12 🔷住宅ローン控除適用について年末残高調書を用いる『調書方式』への変更
33:59 🔷まとめ

定額減税の年調減税事務

定額減税の年調減税事務について説明します。

定額減税は令和6年のみの制度であり、所得税・個人住民税が減税されるというものです。

合計所得金額が1,805万円以下(給与収入のみの場合は給与収入が2,000万円以下の人)は、本人および扶養家族につき、令和6年分の所得税、令和6年度分の個人住民税の特別控除を受けることができます。

定額減税額

これに関係する源泉徴収と年末調整の変更点を説明します。

まず、通源泉徴収と年末調整のイメージを示します。会社が一従業員に毎月支給する給料からは、所得税が源泉徴収(天引き)されております。

この源泉徴収された所得税のことを源泉所得税と言います。

1月から12月の給料から毎月源泉徴収された所得税の合計額と、1年間の最後に計算する実際の所得税額を比較して、過不足を調整します。これを年末調整と言います。

『源泉所得税の合計額』が『実際の1年間の所得税額』よりも多ければ天引きしすぎた分を従業員に還付し、逆に『実際の1年間の所得税額』のほうが『源泉所得税の合計額』よりも大きければ足りない分を追加徴収します。

源泉徴収と年末調整

令和6年は、この源泉徴収と年末調整に定額減税が関係します。

源泉徴収に関しては6月以降に支給する給料の源泉所得税から、本人分と扶養家族分の定額減税額を減額します。この定額減税を織り込んだ上で、実際の1年間の所得税額も計算する必要があります。

つまり、源泉徴収の段階、年末に行う実際の1年間の所得税額の計算の段階、どちらも定額減税を織り込んで計算するということです。その上で過不足を調整します。

実際の定額減税額は、1年間の最後にならないと分かりません。

家族が扶養家族になるつもりで、月々の源泉徴収の段階では定額減税を受けていたけど、実際1年間が終わったらその人が所得が大きかったら、実際には定額減税の対象にならない場合もあります。

そのような場合に源泉徴収の段階と、実際の1年間の所得税額の計算の段階で定額減税額は異なります。それを踏まえて年末調整業務を行うこととなります。

源泉徴収と年末調整、定額減税織り込み

次に給与の支払者の事務について説明します。

給与の支払者(会社)から見て、定額減税は扶養控除等申告書を提出している給与所得者(源泉徴収税額表の甲欄で源泉所得税額を読み取る給与所得者)に対して行います。

定額減税の事務には、月次減税事務と年調減税事務があります。

月次減税事務とは、令和6年6月以降に支給する給与の源泉所得税から その時点で仮決定した定額減税額を減額することです。

そして、1年間の最後にその給与所得者の所得金額や扶養家族が決定し定額減税額も本決定するため、それに基づいて実際の1年間の所得税額を計算して精算します。

普段の年末調整業務と同様に過不足を調整すれば、定額減税についても精算ができたことになります。

月次減税事務、年調減税事務

扶養控除等(異動)申告書の『簡易な申告書』

令和7年分の扶養控除等申告書から簡易な申告書の提出が可能となります。

一般的に、令和6年の年末調整の時期に、翌年の令和7年分の扶養控除等申告書を提出します。
(令和7年の最初の給料の支給の時までに提出する必要があります。)

『簡易な申告書』については、記載すべき事項が前年に職場に提出した扶養控除等申告書から異動がない場合、異動がない旨を記載した簡易な申告書を提出することができます。

つまり『簡単な申告書を提出すればいいですよ!』ということを言っているわけですね。

簡易な申告書を提出できる場合については国税庁のリーフレットに示されております。

簡易な申告書の提出可能要件

上記のチェック項目のいずれにも該当しない場合には、簡易な申告書を提出できます。逆に言えばチェック項目で1つでも該当するものがあれば簡易な申告書は提出できません。

簡易な申告書の記載方法については、以下のようになっております。余白に『前年から異動なし』のように記載します。

簡易な申告書の記載方法

非居住者である扶養親族への送金関係書類の範囲追加

これも扶養控除等申告書に関係する部分です

令和6年の年末調整から、非居住者である扶養親族についての確認書類の中の、送金関係書類としてステーブルコイン(法定通貨と連動するように設計された暗号資産)の電子決済の証明書類が加わりました。

令和6年の年末調整時に、令和6年中にステーブルコインで送金した場合の証明書類が加わったということです。

非居住者を扶養親族とできるケースは以下に示した通りです。配偶者以外の親族は所得が48万円以下であることに加えて以下を満たす必要があります。

非居住者を扶養親族とできるケース

扶養控除に係る確認書類、配偶者控除、配偶者特別控除または障害者控除に係る確認書類を示します。職場に証拠書類として提出する必要があります。

確認書類

送金関係書類には以下のものがあります。

今回新たに加わったものとして、ステーブルコインの電子決済の証明書類などがあります(令和6年の年末調整の時期に、令和6年分の年末調整のために提出することができる書類として加わりました。)

送金関係書類

〇基・配・所への定額減税に係る記載欄の追加

通称『〇基・配・所』と呼ばれておりますが、正確には『基礎控除申告書 兼 配偶者控除等申告書 兼 年末調整に係る定額減税のための申告書 兼 所得金額調整控除申告書』という長い名前の申告書です。

令和6年分については従来に加えて『年末調整に係る定額減税のための申告書』が追加されました。

定額減税に関する項目が、基礎控除申告書と配偶者控除等申告書 兼 年末調整に係る定額減税のための申告書(従来の配偶者控除等申告書です。以下配偶者控除等申告書と呼びます)に足されております。

●基礎控除申告書には『本人定額減税対象』というチェックボックス
・・・本人分の定額減税を受けれる場合にはここにチェックを付けます。

●配偶者控除等申告書『配偶者定額減税対象』というチェックボックス
・・・配偶者分の定額減税を受けれる場合にはここにチェックを付けます。

定額減税に関する項目

基礎控除申告書の記載例を示します。本人分の定額減税を受けれる場合として『本人定額減税対象』のチェックボックスにチェックを付けております。

本人分の定額減税は、合計所得金額が1,805万円以下であれば受けることができます。つまり、区分Ⅰに記載する判定が(A)~(D)のいずれかに該当すれば受けれるということです。

基礎控除申告書記載例

給与収入8,800,000円としており、その金額から給与所得の額を以下の表を用いて計算しております。給与収入から給与所得控除を差し引きして、給与所得を計算する表です。

なお、年内に提出する書類ですので、金額は見積額になりますからね。正しい金額は一年間が終わるまで分かりません。

青字のⓐに給与収入(見積額)8,800,000円を入れて給与所得(見積額)計算すると、6,850,000円になります。

給与所得の計算

次に配偶者控除等申告書の記載例を示します。配偶者分の定額減税を受けれる場合として『配偶者定額減税対象』のチェックボックスにチェックを付けております。
(配偶者の氏名、住所などの情報は記載した上で)

配偶者控除等申告書記載例

配偶者分の定額減税を受けれる場合は、本人の所得が1,805万円以下、配偶者の所得が48万円以下の場合です。

ちなみに配偶者控除・配偶者特別控除は本人の所得が1,000万円以下でないと受けることはできません。したがって、配偶者控除・配偶者特別控除の対象とはならないけど配偶者分の定額減税を受けれる場合があります(上の基礎控除申告書の区分Ⅰが(D)に該当する場合)。

配偶者分定額減税を受けれる場合

基本的には配偶者分の定額減税を受けるためには 配偶者控除等申告書に配偶者の情報を記載して『配偶者定額減税対象』にチェックを付ければ良いとお話しましたが、そのようにしない場合は配偶者分の定額減税を受けるためには『年末調整に係る定額減税のための申告書』を提出する必要があります。

年末調整に係る定額減税のための申告書

保険料控除申告書の記載事項『あなたとの続柄』欄の削除

保険料控除申告書について生命保険料、地震保険料、社会保険料の『あなたとの続柄』の記載を要しないこととされました。

以下の令和5年分の保険料控除申告書にはあった、赤枠で囲った『あなたとの続柄』欄が削除されたということです。

令和5年分保険料控除申告書

こちらが令和6年分の保険料控除申告書です。記載事項が1つ減っております。

令和6年分保険料控除申告書

住宅ローン控除適用について年末残高調書を用いる『調書方式』への変更

住宅ローン控除は2年目以降から給与所得者は年末調整で受けることができます。

令和5年1月1日以降に取得した住宅の住宅ローン控除に関して、改正点があります。

年末残高証明書を用いる『証明書方式』から年末残高調書を用いる『調書方式』に変更となりました。

調書方式

この改正に対応するためのシステム回収等への対応が困難な場合には、引き続き証明書方式とすることができる経過措置が設けられています。

この経過措置については、特段の手続きを行うことなく、すべての債権者に適用されるものとして取り扱っております。

金融機関の方が、この辺のシステム回収の準備ができていなければ、これまでと同じように、納税者の方には金融機関から証明書が送られてくるという方式が取られます。

おそらく多くの金融機関は、まだ調書方式には移行していないのではないかと思います。

納税者から見たら金融機関から証明書が送られてくるか、国税当局から送られてくるか、その違いだけです。おそらくほとんどの金融機関は、まだ間に合っていなくて、従来の証明書方式を取ってくるものと思われます。

まとめ

Youtubeに動画もアップしておりますので、ぜひ参考にしていただければと思います。

00:00 🔷導入
02:07 🔷定額減税の年調減税事務
06:10 🔷扶養控除等(異動)申告書の『簡易な申告書』
20:22 🔷非居住者である扶養親族への送金関係書類の範囲追加
23:18 🔷〇基・配・所への定額減税に係る記載欄の追加
29:57 🔷保険料控除申告書の記載事項『あなたとの続柄』欄の削除
31:12 🔷住宅ローン控除適用について年末残高調書を用いる『調書方式』への変更
33:59 🔷まとめ

-源泉徴収、年末調整